外国人の相続  渉外手続について

英国初の女性首相、「鉄の女」の異名をとったマーガレット・サッチャー元首相が今月8日、逝去されました。
福祉の切り捨て・規制緩和等々、サッチャー首相が行った政策については功罪相半ばといったものもあり、英国では国民の評価は真っ二つに分かれているようですが、中曽根元首相のコメントにもあったように傑出した政治家であったというのが大方の印象ではないでしょうか。ヘヴィー・メタルな人でした。

さて、今回はそのサッチャー元首相の英国にちなんで、英国特有の相続制度についてのお話です。

準拠法の決定

相続に関する法律は、国によって相続財産の定義や相続人の範囲、相続割合などの考え方が異なります。
このため外国人が日本で亡くなった場合、それぞれ適用される法律が異なりますので相続の処理にあたっては、準拠法を確認する必要があります。

  *準拠法とは、国際私法によって、ある法律関係を規律するものとして選択・適用される法のことです。

仮に、日本国内に不動産を所有する英国人(日本人と結婚)が日本で亡くなった場合、その相続にはどういう対応をすれば良いのか?
日本の通則法第36条によれば、相続財産が動産であるか不動産であるかを問わず、相続は被相続人の本国法によると定めています。対して西欧のなかでも英国は、相続においてフランス・ドイツといった大陸法系の国々とは異なり、動産については被相続人の本国法(被相続人の死亡時の住所地の法律による)を、不動産についてはその所在する国の法律を適用するという「相続分割主義」を採用しています。しかしこれでは日本と英国どちらの国の法律を適用するか決められませんので、このような場合を想定して日本の通則法第41条では「当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。」と規定しています。これは、外国の国際私法が異なる準拠法を定めているために一義的に準拠法を決められない場合は、外国が定めている準拠法を日本においても準拠法にするという考え方であり、これを「反致」といいます。
したがって、英国籍の人が日本に不動産を所有していた場合には、不動産の相続については反致が成立し、日本の法律が適用されることになります。

相続分割主義
相続財産を動産、不動産に分類し、動産は被相続人の本国法により、不動産はその所在する国の法律によるという考え方です。不動産が複数の国に点在している場合には各国の準拠法を調べる必要があります。

相続統一主義
相続財産の種類や所在地等にかかわらず、すべての相続関係を被相続人の本国法で決めるという考え方です。

 

法の適用に関する通則法

(相続)
第36条  相続は、被相続人の本国法による。

(反致)
第41条  当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。ただし、第25条(第26条第1項及び第27条において準用する場合を含む。)又は第32条の規定により当事者の本国法によるべき場合は、この限りでない。


また、英国は日本の「包括承継主義(限定承認を除く)」と異なり「管理清算主義」を採用していますので、被相続人の負債(マイナスの相続財産)は相続人に承継されないようになっています。管理清算主義とは、被相続人の相続財産を一旦被相続人の遺産管理人または遺言執行人に帰属させ、債権債務関係の清算手続きを経たうえでプラスの相続財産のみを相続人に承継させる制度です。


国を跨いだ相続などの渉外案件は、調査のために多くの時間を要し、特に神経を使います。   m

 

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