空き家問題対策としての遺言

都会の限界集落の問題

この10数年で、大阪の千里ニュータウン(吹田市豊中市)・泉北ニュータウン(堺市・和泉市)、東京の高島平団地・戸山団地・多摩ニュータウンといった大都市圏のニュータウンやマンモス団地では、相続がもたらした空き家問題や急激な高齢化による孤独死・買い物難民といった都会の限界集落の問題を引き起こしています。当オフィスの地元である吹田・豊中には日本初の本格的ニュータウンとして開発された「千里ニュータウン」がありますが、ここも決して例外ではありません。しかし、ニュータウンやマンモス団地が抱えるこういった問題を解決すべく、地元自治体や民間の協力によって今後の再生計画がたてられ様々な取り組みが進められています。 

ある不動産流通コンサルタントの方から聞いた話では、相続した不動産物件の取引件数が一昔前に比べて飛躍的に増加しているとのことです。実家を相続したものの、相続人が既にそれぞれのマイホームを取得していたり、管理コストの負担を嫌うなどの理由で売却に踏み切る事例が増加しているようです。しかし、そうした流通に乗る物件とは異なり、独居者の死亡によって無人化し、空き家のまま放置されている相続物件の場合は様々なトラブルを引き起こします。都市部や郡部を問わず日本全国ではここ数年で、こういったトラブルの原因になる空き家やゴースト・マンションの数が急増して深刻な問題になっています。
 

空き家が急増する原因

放置物件が急増する主な原因には

  ・遺産分割が未解決で権利関係が定まらず、手続きが先送りにされている。
  ・相続人が遠方に住んでいるために管理が行き届かない。
  ・管理にかかる経済的負担に応えられない。
  ・固定資産税の「住宅用地に対する課税標準の特例」*が家屋の取り壊しを阻む要因になっている。
  ・相続関係が複雑で相続人の意思統一ができないといった理由で管理不全に陥っている。

  といったものが挙げられますが、ここに列挙した以外にも様々な原因があります。

*  住宅が建っている土地には、「住宅用地に係る固定資産税の課税標準の特例」が適用され課税標準額が低くなります。住宅を取り壊して更地にしてしまうとこの特例が適用されなくなり固定資産税が高くなります(一定期間内に建て替え予定がある場合を除く)。建物を取り壊せば建物に対する固定資産税はかからなくなりますが、築年数の旧い建物であれば固定資産税はかなり低くなっていますので、その分を差し引いても土地の固定資産税が上記の特例を受けられなくなることで高くなります。

 

空き家が招くトラブル

放置された空き家では様々なトラブルが発生します。

 ・老朽化した家屋の倒壊
 ・廃屋の建材の破片等が飛散して近隣や通行人へ危害が及ぶ
 ・空き家の敷地内での雑草の繁茂
 ・ゴミの不法投棄
 ・不審者の侵入によって犯罪の温床となる
 ・放置された家屋への放火による延焼の危険性

こういった空き家の問題についてはどの地域でも対策に苦慮しており、その結果として「空き家等管理条例」*を制定する地方自治体が多くなっています。しかし、職権で対応できる範囲にも制限があるために所有者(相続人)の特定にたどり着けず、所有者に管理を促すことができないケースも多くあります。行政の熱心な取り組みがあるものの、急速な少子高齢化によって今後もこうした問題は爆発的に増加する見通しのようです。

* 無人化した空き家等が放置されることで建物の建材等が台風や自然崩壊によって近隣や公道に飛散するのを防いだり、敷地内に繁茂した草木を除去したりするなどを所有者等に促し、事故・犯罪・火災などを防止する目的で制定されるものです。

 

空き家問題解決の一助

高齢の独居者のなかには「連れ合いは先立ち、子供もいないし、莫大な財産があるわけでもないし、、、」といった理由から自宅の行く末について考えている方はごく少数のようです。
家の所有者が亡くなった後、無人化して放置された物件にならないためにも、遺言で自宅の取り扱いや処分方法などを記しておくことも一つの方法です。
遺言書の作成は、こうした空き家問題の解決の一助にもなりえ、今後は必要視されてくるのではないでしょうか。 m