明治31年7月16日から昭和22年5月2日までの間に発生した戸主の相続

明治31年7月16日から昭和22年5月2日までの間に戸主相続が発生した場合は、明治31年7月16日に施行された民法(以下、旧民法という)が適用されます。
旧民法においては、戸主に相続が発生した場合は家督相続制度によって特定の家督相続人が全財産を単独で相続していました。

家督相続の開始原因

戸主の死亡(旧民法964条)・・・ 
戸主が死亡すると家督相続が開始しました。
死亡には自然死のみならず失踪宣告による擬制死亡も含まれます。

戸主の隠居(旧民法752、964条)・・・      
戸主が満60歳に達したときは(女戸主には年齢制限なし)家督相続人とともに隠居を届出ることで家督相続人が新しい戸主となり、隠居した前戸主が新しい戸主の家族として戸籍に記載することができました。
前戸主が隠居後に取得した財産については家督としては扱われず、「遺産相続」(戸主以外の相続)によって相続されることになります。隠居届と不動産取得の日付の先後関係の確認が重要になります。

    旧民法下における「隠居」制度についてはこちら

戸主の戸籍喪失(旧民法964条)・・・ 
戸主が外国籍を取得した場合など、日本国籍を喪失した場合には家督相続が開始しました。
また、婚姻または養子縁組によって他家から入った戸主が、婚姻または養子縁組の取消しによってその家を去った場合にも家督相続が開始しました。
女戸主の入夫婚姻(入夫が戸主となった場合)又はその後の入夫の離婚・・・
夫が妻である女戸主の家に入り戸主となった場合に家督相続が開始しました。ただし、入夫婚姻の際に、入夫が戸主にならないという意思表示した場合は入夫が新戸主にはならず家督相続も開始しませんでした。しかし、大正3年の戸籍法改正によって、入夫婚姻の際に届書に夫が新戸主となるという記載がなければ、妻が入夫前と同様に戸主の身分のままであるという取扱いに変わりました。

cf 明治31年7月15日以前(旧民法施行前)は入夫婚姻があった場合は当然に入夫が戸主となって家督相続が開始しました。
また、入夫婚姻によって入夫が戸主になった場合、その後に入夫が離婚すると元の戸籍に復籍したため、この場合にも家督相続が開始しました。
なお、入夫の離婚によって開始した家督相続の場合、前戸主である女戸主が家督相続人になるわけではなく旧民法に定める順位に従って家督相続人を決めました。
 

家督相続人の順位

第1順位  第一種法定推定家督相続人(旧民法970)

被相続人を戸主とする戸籍にいる直系卑属が家督相続人となります。
家督相続人は1人に限定されるため、直系卑属が数人ある場合は以下の順位で相続人を決めます。

1.    親等が異なる者の間では親等の近い者が優先されます。
2.    親等が同じ者の間では男が女に優先されます。
3.    親等と性別が同じ者の間では嫡出子が庶子または私生児(非嫡出子)に優先されます。
4.    親等が同じ女の間では嫡出子及び庶子が非嫡出子に優先されます。
5.    1~4の順位が同じ者の間では年長者が優先されます。

上記を整理すると

1.嫡出男子
2.庶出男子
3.嫡出女子
4.庶出女子
5.私生子男子
6.私生子女子

・  旧民法では家督相続の放棄は許されませんでした。(旧民法1020)

・  法定推定家督相続人が、家督相続開始前に死亡または相続欠格事由に該当・相続人廃除・離籍・離縁等により相続権を失った場合は、その者に直系卑属があるときは、前記の順位に従い特定の一人が当初の法定推定家督相続人と同順位で代襲家督相続人となります。(旧民法974)。
なお、昭和9 年6 月28日以降は被相続人及び被代襲者の同一戸籍にいる直系卑属であることが要件として追加されたため、養子縁組前の養子の子、継子、継親子関係発生前に出生していた継子の子は代襲家督相続人にはなれなくなりました。

第2順位  指定家督相続人(旧民法979)

戸主は、 第1順位の法定推定家督相続人がいない場合、生前または遺言によって家督相続人を指定できました。(戸籍の届出により効力発生)
なお、第1順位の法定推定家督相続人と異なり家督相続の放棄が許されていました。

第3順位  第一種選定家督相続人(旧民法982)

第2順位の家督相続人もいない場合、戸主と同一戸籍にいる被相続人の父、父がいないときは母が家督相続人となりました。
父母がいない場合は、親族会が以下の順位に従って家督相続人を選定します。
被選定者は、相続開始の時及び選定時に同一戸籍にいることを要する。

1.    家女(かじょ)である配偶者
2.    兄弟
3.    姉妹
4.    家女(かじょ)ではない配偶者
5.    兄弟姉妹の直系卑属

親族会とは・・・
旧民法で、一定事項について議決をするために一定の者の請求によって裁判所によって招集される合議機関です。

家女とは・・・
家附の娘、養女。婚姻または婿養子縁組の際に養子からみて養家にいる女子。元から戸主と同一の戸籍にいる妻を指す。

被選定者は相続開始時に遡って家督相続人としての地位を取得します。
選定は選定者が意思表示した時に効力が発生し、被選定者の承諾は必要ありません。
選定だけでは戸籍の届出は不要でしたが、被選定者の承認時に家督相続の届出をする。

第4順位  第二種法定家督相続人(旧民法984)
第3順位の家督相続人もいない場合は、戸主と同一戸籍にいる直系尊属で親等が近い者が法定家督相続人になりました。同親等の直系尊属がいる場合は男が優先されます。(旧民法984)
直系尊属には、養親を含みますが姻族(義親、継親)は含みません。

第5順位  第二種選定家督相続人(旧民法985)
第4順位の家督相続人もいない場合は、戸主の相続開始後に親族会が同一戸籍にいる親族に限らず、他家の親族さらには他人から家督相続人を選定します。
 

旧民法当時における留保財産や家督相続後の特有財産について

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