明治31年7月15日以前に発生した戸主の相続について

明治31年7月15日以前は、戸主の相続が開始した場合には家督相続人が単独で全財産を相続していました。ただし、当時施行されていた相続法は「華士族家督相続法」のみでしたので、実務では当時の慣例や太政官布告、裁判例、太政官達、内務省・法務省指令、司法省先例などによって運用され、統一的な扱いは行われていませんでした。

太政官布告28号 華士族家督相続は当主の意思による跡目相続、263号 華士族につき総領の男子(長男子)による家督相続制、明治8年5月15日の太政官指令では、平民も華士族と同様に長男子が家督相続する扱いとなりました。
 

家督相続の開始原因

戸主の死亡・・・ 
戸主の死亡により家督相続が開始

戸主の隠居・・・ 
原則として、隠居の届出によって家督相続人が新しい戸主となり、隠居した前戸主が新しい戸主の父として戸籍に記載されました。隠居後に分家をして戸主になることもあります。

女戸主の入夫婚姻・・・ 
夫が妻である女戸主の家に入り戸主となった場合に家督相続が開始します。当時は、入夫婚姻があった場合は入夫が当然に戸主となり家督相続人となるのが一般的でした。

旧民法施行(明治31年7月16日)後は、婚姻時に入夫が戸主にならないという意思表示がなければ入夫が新戸主となるものとされていました。(旧民法736条)
さらにその後、大正3年の戸籍法の改正によって、入夫婚姻の届出の際に夫が新戸主となるという記載がなければ、妻が従前のまま戸主の身分を継続するという取扱いに変わりました。この大正3年の戸籍法の改正の前後で戸主の身分の決まり方が違います。
 

家督相続人の順位

家督相続は通常の実親子関係(実子)・養親子関係(養嗣子:跡継ぎ養子のみ)・継親子関係(継子)・嫡母庶子関係(庶子)の区別なく認められていましたが、慣例等によって運用されていたので統一的な扱いではなく、以下の順位が採用されていました。

第1順位

戸主と同一戸籍にいる卑属関係にある親族(傍系を含む)が法定推定家督相続人となります。
家督相続人は一人に限られていますので、直系卑属が数人ある場合の相続順位は次のようになります。

  1. 親等が異なる者の間では親等の近い者が優先されます。
  2. 親等が同じ者の間では男が女に優先されます。
  3. 親等と性別が同じ者の間では嫡出子が庶子または私生児(非嫡出子)に優先されます。
  4. 1~3の順位が同じ者の間では年長者が優先されます。

上記を整理すると次の優先順位となります。

  1. 嫡出男子
  2. 庶出(認知された)男子
  3. 嫡出女子
  4. 庶出(認知された)女子
  5. 私生子(認知されない)男子
  6. 私生子(認知されない)女子
第2順位

第1順位の法定の推定家督相続人がいない場合は、戸主は遺言で家督相続人を指定することができました。

第3順位

第2順位の家督相続人もいない場合、戸主と同一戸籍にいる被相続人の父、父がいないときには母は家族の中から以下の順位で家督相続人を選定できました。

  1. 兄弟
  2. 姉妹
  3. 兄弟姉妹の卑属関係にある親族のうち最も親等が近い男、男がいないときは女
第4順位

第3順位の家督相続人もいない場合は、戸主の相続開始後に親族会が同一戸籍にいる親族から家督相続人を選定することができました。

第5順位

第4順位の家督相続人もいない場合は、戸主と同一戸籍にいる尊属関係にある親族で最も親等が近い者が任意に家督相続人になれました。

第6順位

第5順位の家督相続人もいない場合は、配偶者が家督相続人になれました。

第7順位

第6順位の家督相続人もいない場合は、戸主の相続開始後に親族会が他人から家督相続人を選定することができました。