同時死亡の推定

同時死亡の推定とは

相続は人の死亡によって開始します。また、同時存在の原則により、相続人たりうるには相続人が被相続人の死亡時に生存していることが要件になります。

                                                                               胎児の例外はこちらを参照
                                                                               代襲相続の例外はこちらを参照

このため夫婦や親子、兄弟姉妹のようにお互いが相続関係にある者同士が同時期に亡くなったときは、各人の死亡時期の先後によって相続関係に大きな影響が出ます。
このような問題は、航空機・船舶・鉄道・自動車等の事故、地震や台風などの自然災害、雪山遭難、火災、一家心中などによって複数の死亡者が出て、各人の死亡時刻が確定できない場合に発生します。

実際には人がいつ死亡したかを正確に判断し、複数の死亡者の死亡時期の先後を証明することは医学的な問題もあり非常に難しいことであるため、昭和37年の民法改正により「同時死亡の推定」(民法第32条の2)の規定が設けられました。

第32条の2
数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。


この規定は、「同時」であれば複数の死亡者が同一の事故等で亡くなることは要件になっていませんので、例えば、Aさんが、事故や災害等で生死が不明なまま、Bさんが病院で亡くなり、その後にAさんの死亡が確認されたものの、AさんとBさんの死亡時期の前後が明らかでない場合も同時死亡の推定がはたらきます。
なお、同時死亡の推定がはたらく場合、前述の同時存在の原則により同時に死亡した者同士はお互いに相続人にはなりません。(但し、代襲相続の原因にはなります。)

不動産登記実務においてはこの規定が設けられる前から同規定と同じ取扱いがされていましたが(昭和36年9月11日民甲第2227号回答)、一般には、相続関係にある者同士が同時期に死亡した場合、相続関係が定まらず、遺産に先に手をつけた人が相続できるという早い者勝ちが認められる風潮がありました。

以下の事例で考えますと、

夫A 妻B
AB間の子C(未婚、子供はいない)
夫Aの親Xは健在
妻Bの親Yは健在


事例1 Aが病院で病死、翌日にBが交通事故で死亡
事例2 AB夫婦および子Cが同一の事故や災害でともに死亡(死亡時刻の先後が不明)
事例3 Aが病院で病死、同時期にBCが事故や災害で死亡(死亡時刻の先後が不明)


事例1の場合、A死亡によってAの財産を一旦は妻Bと子Cが相続し、妻Bの死亡によりBが一旦相続した財産はさらに子Cに相続されます。

事例2の場合、同時死亡の推定がはたらき、ABCは前述の同時存在の原則により各人の相続において互いに相続人にはならないことになります。
したがってA死亡によってAの財産は親Xが相続、B死亡によってBの財産は親Yが相続、Cの死亡によってCの財産はCの直系尊属であるXYが相続することになります。

事例3の場合、前述のとおり複数の死亡者が同一の危難(災害、事故等)で亡くなることは要件になっていませんので、事例2と同様に同時死亡の推定がはたらきます。
したがってA死亡によってAの財産は親Xが相続、B死亡によってBの財産は親Yが相続、Cの死亡によってCの財産はCの直系尊属であるXYが相続することになります。

亡くなった方の死亡時期は戸籍の死亡事項で確認します。
一般に戸籍においては死亡届の際に添付された死亡診断書死体検案書に記載された死亡時分が転記されます。(認定死亡を除く)
死亡診断書に記載された死亡時分は信用性が高いため、戸籍に記載された死亡時刻に死亡したものと推定されために「同時死亡の推定」は働きませんが、推定死亡時刻を記載した死体検案書の場合には、検案書に記載された死亡時分よりも「同時死亡の推定」が優先されるといわれています。
ただし、第32 条の2は、「見做(みなし)」規定とは異なりあくまで「推定」規定ですので、
死亡時刻がもとで相続関係に紛争が生じた場合は訴訟で争うことができ、反対の証拠を挙げれば死亡時期の先後を覆すことができます。


死亡診断書死体検案書の使い分け

  医師は、次の二つの場合には、死体検案を行った上で、死亡診断書ではなく死体検案書を交付すること   になっています。
  ① 診療継続中の患者以外の者が死亡した場合
  ② 診療継続中の患者が診療に係る傷病と関連しない原因により死亡した場合
     また、外因による死亡またはその疑いのある場合には、異状死体として24 時間以内に所轄警察署に     届出が必要となります。