相続権の喪失 相続人の廃除

相続人の廃除とは

遺留分を有する推定相続人(相続人となるべき者)に、被相続人に対する虐待、侮辱、非行等がある場合、被相続人はその相続人の相続権を喪失させることができます。相続権を喪失するという意味では「相続欠格」と同じ効果がありますが、被相続人の意思に基づいて、家庭裁判所に対して調停や審判の申立をする点が「相続欠格」とは異なります。
 

相続人の廃除の対象となる者とは

相続人廃除の対象者となるのは「遺留分を有する推定相続人」に限られますので、遺留分が認められていない兄弟姉妹(民法1028条)が相続人となる場合は相続人の廃除はできないことになります。これは、遺留分が認められていない兄弟姉妹については遺言を用いて相続分を指定することで事実上相続人から除外できるためです。
 

民法 892 条で列挙されている廃除事由

1.遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して虐待をした場合
2.遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して重大な侮辱を加えた場合
3.推定相続人にその他の著しい非行があった場合

虐待や重大な侮辱といっても、被相続人の主観だけで判断されるべきものではなく、客観的かつ社会的見地からみて廃除することに相応な正当性が必要になります。

1.「虐待」とは、被相続人に肉体的、精神的な苦痛を加える行為のことです。
2.「重大な侮辱」とは、被相続人の名誉や感情を害する行為のことです。
3.「その他著しい非行」とは、被相続人に精神的な苦痛や財産的な損害を与えたことによって家族関係が破壊される程度の非行のことです。
cf 虐待や侮辱と異なる点は、直接被相続人に対して行われたことが要件とされていないことです。
 

廃除の効果

廃除の効果は、審判が確定するか又は調停が成立することによって発生します。
廃除については戸籍の届出が必要ですが、これは報告的届出ですので、届出がないからといって廃除の効力がなくなるわけではありません。

遺言によって廃除する場合、審判は相続開始後に確定することになりますが、廃除の効力は相続開始時に遡って発生します。

廃除の相対効
被廃除者は、廃除請求した被相続人に対する関係でのみ相続権を喪失するのみで、他の被相続人の相続権まで奪われるわけではありません。
また、被廃除者の子は代襲相続ができます。
 

廃除の取消し

被相続人は、何時でも、廃除の取消を家庭裁判所に請求することができます。
遺言によっても廃除の取消請求をすることができますが、この場合は遺言執行者が家庭裁判所に対して廃除の取消請求をする必要があります。
廃除が取消されると、廃除の効果は相続開始時に遡って消滅し、相続権が回復することになります。