別居中、離婚調停・訴訟中の配偶者も相続できるのか?

別居期間中、離婚係争中に一方配偶者が亡くなった場合の相続

婚姻の本旨に反する*別居期間中や離婚係争中に一方の配偶者が亡くなった場合、他方の生存配偶者に相続権があるのか。事実上婚姻関係が破綻している方や離婚で争っている最中の方にとっては、最終決着までの間に相手や自分が死亡したときの相続がどう処理されるのかは重要な問題です。

しかし、定年退職後の実年・熟年世代の場合と異なり、30、40代の夫婦の場合にはこの問題を自覚されることはまずありません。

民法では、法律上の婚姻関係が継続しているかぎり、死亡した配偶者の相続において生存配偶者は当然に相続人として扱われます。
このため、夫婦が別居中・離婚係争中であっても生存配偶者の相続権が否定されることはありません。婚姻期間や別居期間の長短は問われず、また、生存配偶者に内縁関係が発生していても相続権に影響はありません。

*「婚姻の本旨に反する別居」とは、単身赴任や親の介護といった理由によるものではなく、婚姻意思をともなわない状況での別居をさします。

上記の理由から、別居や離婚係争中の方で、相手方に相続させたくない気持ちが強いときは遺言や生前贈与によって対処する必要があります(遺留分の問題は残りますが)。
相手方に虐待、侮辱、非行の事由がある場合には相続廃除によって相続権を喪失させる方法も考えられます。判例では、駆け落ちした配偶者を遺言によって相続廃除することを認めた事例があります。

<新潟家裁高田支部昭和43年6月29日審判>

アルコール依存症の入院加療中であった夫(被相続人)と子を遺棄し、夫が経営する店の従業員と駈け落ち出奔した妻に対して、「自分の療養中に子供たちを放置した挙句に事務経理の引継ぎもしないで男と逃げるとは許せない」旨の内容が記された遺言(夫がこのことが原因で自殺)は、妻の虐待又は重大な侮辱、著しい非行事由による相続人廃除の意思表示があったことが推認されるとした事案。

 

また、長期別居中の配偶者が多額の借金を残して死亡した場合などは、たとえ20年以上別居していようと死亡配偶者の相続債務を相続することになりますので、相続放棄等の対応が必要になるときがあります。

 

A男さんが負債もなく土地・建物を遺して死亡した場合

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AB間、AC間のいずれにも子がない場合

内縁の妻CさんはA男さんの財産は相続できず、本妻Bさんが相続することになります。A男さんが、Cさんに不動産を相続させたい場合は遺言や生前贈与による対応が必要になります。ただし、本妻Bの遺留分を侵害する場合は、Bさんから遺留分減殺請求される可能性があります。
 

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AB間、AC間のいずれにも一人ずつ子がいる場合

A男さんが非嫡出子を認知している場合は、本妻Bさん(2/4)、嫡出子D(1/4)、非嫡出子*E(1/4)、認知していない場合は本妻Bさん(1/2)、嫡出子D(1/2)が相続することになります。
A男さんが、Cさんや非嫡出子Eだけに不動産を相続させたい場合は遺言や生前贈与による対応が必要になります。ただし、本妻Bや嫡出子Dの遺留分を侵害する場合は遺留分減殺請求される可能性があります。内縁の妻Cさんに相続権がないのは事例1と同じです。

        *  嫡出子と非嫡出子(婚外子)の相続分について

          内縁・事実婚配偶者の相続権について

A男さんが負債のみ残して死亡した場合

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AB間、AC間のいずれにも子がない場合

内縁の妻C子さんには相続債務の問題は発生しません。逆に20年以上別居状態であったとしても、本妻B子さんは債務を相続することになりますので、B子さんとしては相続放棄等の対応が必要になります。