未支給年金に関する疑義照会と回答

 
日本年金機構では、取扱業務に関して、法令・諸規程等の解釈が不明確で統一見解が存在しない場合は年金事務所等から機構本部に対して照会できるシステムがあります。照会に対してはその内容を疑義照会回答として、WEB上で公開しています。ここでは、未支給年金に関する疑義照会事案をいくつか掲載いたします。
 

「相続人に係る未支給年金の請求について」


死亡した受給権者と生計同一のない相続人について、未支給年金の請求は可能ですか。
 
<事例>
年金受給者Aの死亡により、生計同一関係のある子Bが未支給年金請求権者として生存していましたが、未支給年金請求前に子Bも死亡しました。Bの子供であるC(Bの相続人)にAと生計同一関係があれば次順位者として未支給請求者となりますが、今回の場合、CとAには生計同一関係はありません。Cの主張としては、Bが未支給年金請求前に死亡した場合、未支給年金請求権の移転(いわゆる次順位者への転給)に関する規定、条文等が無い以上、Bが死亡した後は、生計同一関係の有無にかかわらず民法第887条によりBの相続人であるCに未支給年金請求権が移転するのが相当ではないかとのことです。
 
<回答>
国民年金法第19条、厚生年金保険法第37条の規定により、国民年金、厚生年金保険の年金の受給権者が死亡したとき、その死亡した者に支給する給付で、まだ支給されていないものがある場合は、その者の配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹で、受給権者が死亡した当時に受給権者と生計同一であった方
が、自己の名で未支給となっている給付の支給を請求できます。
また、国民年金法第24条、厚生年金保険法第41条の規定により、給付を受ける権利は、一身専属のものであり、遺産相続の対象にはなりません。したがって、本件については、Cは自己の名で未支給年金を請求することはできますが、CとAに生計同一関係がないことから、未支給年金を支給することはできません。
 

「同順位者の未支給年金請求について」


同順位者の未支給年金請求について、照会します。
母親の死亡のため、長男からの請求により未支給年金支払の処理を進めていました。しかし、三男からも請求があったため、同順位者が請求済として返戻したところ、「同居し認知症のある母親の生活の面倒をみてきたのは自分である。」として異議申立がありました。双方に再度それぞれ未支給請求書を返戻し、請求者を統一するための話合いを行っていただくようお願いしましたが、話合いは行われることなくそれぞれから再度請求書が提出されました。請求者をいずれか一方にしていただくよう依頼していますが、兄弟間で話合いができない状態のため、支給決定が行えない状況です。
 
<回答>
本件は、生計同一が確認できる同順位の2人からの請求であることから、生計同一が確認できた場合は、先に申請した長男からの請求を同順位である他の方からの請求を含む全員のための請求とみなし、支給決定して差し支えないと判断します。
 

「生計維持関係の認定における「第三者の証明書」の第三者の範囲について」


生計維持関係等の認定基準につきましては、「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(平成23年3月23日年発0323第1号)にて示されているところですが、第三者の証明書の第三者については「民生委員…隣人等であって、受給権者、生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者の民法上の三親等内の親族は含まない。」とあります。未支給請求に際して、請求者の内縁の妻が「三親等内の親族以外の者」として第三者の証明書の第三者として認められるのかどうか照会します。
 
<回答>
第三者の範囲を三親等内の親族以外とした趣旨は、近親間で利害関係があると推測される者を除外し、証明事項の信憑性を担保するとともに、これまで曖昧であった「第三者」の範囲を統一することにあります。第三者の範囲については、通知上の取扱いである「民法上の三親等内の親族以外」を厳格に適用するものとし、内縁の妻は親族ではないため、第三者の証明書の第三者として認めています。
 

「特別失踪者における未支給年金請求について」


乗船業務を生業とし、勤務のため乗船し、出航翌日に海難事故により行方知れずとなり、事故3日後に捜索を打ち切られた方が、特別失踪宣告を受けた場合の未支給年金の取扱いについてお伺いします。本件の場合、死亡したとみなされるのは「危難の去りたる時」となるので、行方不明になってから死亡とみなされるまでが短期間のため、未支給の要件である「生計同一」があると取り扱ってよいでしょうか。また、遺族厚生年金については事故報告に基づき死亡推定にて支給決定が行われています。未支給年金についても海難事故による失踪の場合、事故日を死亡日と取り扱ってよいかお伺いします。
 
<回答>
国民年金法第18条の2の規定では、「船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となった際現にその船舶に乗っていた者若しくは船舶に乗っていてその船舶の航行中に行方不明と
なった者の生死が3箇月間分らない場合又はこれらの者の死亡が3箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期が分らない場合には、死亡を支給事由とする給付の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となった日又はその者が行方不明となった日に、その者は、死亡したものと推定する。」としていますが、同法第18条の3の規定では、失踪の宣告を受けたことにより死亡したとみなされた者に係る死亡を支給事由とする給付の支給に関する規定の適用については、第37条、第37条の2、第49条第1項、第52条の2第1項及び第52条の3第1項中「死亡日」とあるのは「行方不明となった日」とし、「死亡の当時」とあるのは「行方不明となった当時」とする。」としており、同法第19条については含まれていません。
また、厚生年金保険法第59条の2の規定では、「船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となった際現にその船舶に乗っていた被保険者若しくは被保険者であった者若しくは船舶に乗っていてその船舶の航行中に行方不明となった被保険者若しくは被保険者であった者の生死が3月間わからない場合又はこれらの者の死亡が3月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合には、遺族厚生年金の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となった日又はその者が行方不明となった日に、その者は、死亡したものと推定する。」としており、同法第37条については含まれていません。
よって、本件の死亡日は、民法第31条の規定による「その危難が去った時」となり、死亡日に生計を同じくしていなければ未支給年金は支給されません。
 

「未支給年金請求の可否について」


下記事例において、未支給年金を請求できる孫にあたるかご教示願います。
<事例>
受給者A子(平成23年死亡)
A子の養子B男(昭和62年死亡)
B男の養子C子
A子とB男の養子縁組日昭和48年7月9日
B男とC子の養子縁組日昭和48年7月10日
今回、受給者A子が死亡したことにより、未支給年金の相談がC子よりありました。
 
<回答>
本件については、C子は、A子からすればB男の子、すなわち孫としての身分を有しているため、未支給請求者の範囲に含まれます。
<参考>
養子は縁組の日から養親の嫡出子たる身分を取得する(民法第809条)。養子縁組によって、養親と養子との間で親子関係が発生することは当然であるが、さらに養子と養親の血族との間に法定血族関係が発生する(民法第727条)。「嫡出子たる身分」の取得とは、父母の婚姻中に出生した子と同じ地位を取得するとの趣旨であるが、その身分を取得する時期は縁組が効力を生ずる時である。なお、縁組後に出生した養子の子は、養親からすれば自分の子の子という扱いになる(大判昭19.6.22)。
 

「東日本大震災により行方不明となった者の死亡推定の取扱いについて」


遺族年金等の請求者の同順位者や先順位者が行方不明である場合、申立書等により死亡推定できるでしょうか。
 
<回答>
東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第97条及び第99条における「死亡に係る給付の支給に関する規定の適用」の範囲については、先順位者及び同順位者である行方不明者が死亡したものと推定されることにより、後順位者等に受給権が発生する場合には、当該行方不明者も含まれると解釈することができます。また、ご照会のように、先順位者の死亡推定を行うような場合については、給付指2011-169に基づき、行方不明となった先順位者の死亡推定を行ってください。
 

「未支給請求者の範囲について」


国民年金法第19条及び厚生年金保険法第37条では、年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金を請求することができるとされています。そこで、次の場合に未支給請求者となり得るかご教示願います。
 
<事例>
平成22年10月18日死亡した年金受給権者に、養子縁組した子の実子(いわゆる孫)がいて、年金受給権者が死亡当時、その者と一緒に住んでおり、生計同一でした。しかし、上記受給権者とその子の養子縁組した日が平成21年1月13日であり、養子縁組した子の実子(いわゆる孫)の生年月日は、昭和30年2月13日であり、養子縁組する前に生まれている子です。民法第727条【縁組による親族関係の発生】によると、養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。とあり、また民法第809条【嫡出子の身分の取得】において、養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。また、ただし、養子縁組前において、養子に子供がいた場合、養子の子と養親とは親族関係は生じない。とされており、養子縁組前に生まれている子については、親族関係は生じないとされているため、国民年金法第19条及び厚生年金保険法第37条に規定されている孫にあたるかあたらないかにつきまして、ご教示願います。
 
<回答>
養子縁組による親族関係の発生等については、民法第727条及び第809条に規定されていますが、判例において、「普通養子に縁組前の子があるときは、その子は養親との間に血族間におけると同一の親族関係を生じない。すなわち縁組前の養子の直系卑属は、養親との間に血族関係を生じない」としています(大判昭和7・5・11民集11・1062)。よって、国民年金法第19条第1項及び厚生年金保険法第37条第1項に規定する孫には該当しません。
 

「数次縁組(転縁組)に係る未支給(年金・保険)について」


厚生年金保険法第37条、国民年金法第19条において、未支給(年金・保険)の対象となる遺族の範囲は規定されていますが、養子縁組が解消されない状態のまま、養子が更に他の養子となった場合(数次縁組(転縁組))、その前に養子縁組していた養父母が死亡したときは、養子は未支給(年金・保険)の対象となる遺族となり請求できるのかご教示願います。
 
<回答>
転縁組が普通養子縁組であるときは、その成立後も、従前の養子縁組について、離縁しない限り養親と養子の関係に変動はなく、未支給を受けることができる遺族の範囲に該当します。
 

「老齢基礎(厚生)年金受給権者を故意に死亡させた者への未支給年金の支給について」


妻が老齢基礎(厚生)年金受給権者である夫を故意に死亡させた場合、厚生年金保険法第76条に該当するため遺族厚生年金の支給は行われませんが、未支給年金についても、同法第73条の2により同様に取り扱ってよいでしょうか。また、その場合には、次順位者である子に支給してもよいでしょうか。
 
<回答>
国民年金法第71条及び厚生年金保険法第76条において、故意に被保険者を死亡させた場合は、遺族基礎年金、遺族厚生年金は支給しないと規定されています。未支給年金と未支給の保険給付は、保険給付の制限の対象となっていないことから、国民年金法第19条及び厚生年金保険法第37条により生計同一関係が確認できれば、故意に被保険者を死亡させた者であっても支給されます。したがって、本件の未支給年金は、子ではなく先順位者である夫を故意に死亡させた妻に支給されます。