公営住宅の使用権は相続できるか?

 

民間の賃貸住宅の相続性については前稿で説明しましたが、ここでは公営住宅の場合はどういう取り扱いになるのかを見ていきましょう。
 

都道府県営住宅や市町村営住宅といった公営住宅は、住宅の確保に困っている低所得者に対して低額家賃の住宅を提供することで国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とするものです。
 
入居希望者が多い公営住宅の場合、応募者に対しては公平性を保つ必要がありますので、入居者の要件・選考基準・入居後の利用関係など、原則として公営住宅法及び事業主体の定めた条例に基づいて管理運営しています。
公営住宅であっても、民法や借地借家法といった私法上の賃貸借と重なる部分も多いのですが、公営住宅法および事業主体が定めた条例に特別の規定があればこれが優先されることになります。
 
公営住宅への入居は公募を原則としますので、いたずらに賃借権(使用権)の世襲が続くと同一の家族が先々までひとつの物件を独占する結果を招いてしまいます。
こうしたことで長期の入居者と新規応募者との公平性が損なわれないよう、公営住宅の賃借権(使用権)は被相続人の一身専属権として捉え、相続の対象にはならないとしています。
 
<公営住宅の使用権の相続性に関する最高裁平成2年10月18日判決>
公営住宅の規定の趣旨に鑑みれば、入居者が死亡した場合でも、その相続人が公営住宅を使用する権利を当然に承継すると解する余地はないというべきであるとしています。

しかし、事業主体(都道府県や市町村)が条例で定めている一定の要件をクリアし、且つ、欠格事由に該当しなければ、事業主体の承認を受けて引き続き居住できるシステムになっています。
これを「入居承継(使用承継)」といいますが、あくまで相続としての権利承継ではありませんので、何らかの理由で相続放棄をした方でも入居承継の資格はあります。

なお、UR賃貸のようにやや高めの賃料設定をしている賃貸物件は、「公共住宅」としては分類されますが、ここでいう公営住宅にはあたりません。
 

事業主体別住宅条例施行規則

  北摂・三島地域(吹田市、高槻市、茨木市、摂津市、島本町)における公営住宅の入居承継について
  北摂・豊能地域(豊中市、池田市、箕面市、能勢町、豊能町)における公営住宅の入居承継について
  その他の地域における公営住宅の入居承継について
 

入居承継の厳格化について

国土交通省は平成17年に、公営住宅の入居承継の親族要件を「原則として配偶者のみとし、親子間の入居承継を認めない」とする通知を行いました。
しかし、この通知はあくまでガイドラインとしての性質上、通知内容の実行については各事業主体の裁量に委ねられ、入居承継基準の厳格化については事業主体(都道府県や市町村)によって対応が分かれました。
親子間の入居承継を廃止した事業主体(例:東京都営住宅、大阪府営住宅)、存続させている事業主体(例:大阪市営住宅、吹田市営住宅 等々)があり、また、例外規定としての特例(障がい者など)の範囲についても各事業主体によって独自の規定を設けています。

公営住宅には民間の賃貸物件とは異質な問題もあり、人の居住権に関わることであるために各事業主体は慎重に対策を考えているようです。