終身建物賃貸借において借主が死亡した場合

終身建物賃貸借契約 (借地借家法の特例)

入居者の孤独死孤立死がまねく家主側の諸問題は前述のとおりですが、賢明な家主であれば、賃借人が死亡すれば契約が終了する「期限付きの賃貸借契約」を結べばある程度の問題は防げるのではないかと考えます。しかし、居住用建物の賃貸借については借地借家法30条で「建物の賃借人に不利な特約は無効」としていますので実際にはこの考えを実現することができません。

しかし、近時、不動産業界や介護・福祉業界のニーズに対応して高齢者の居住の安定確保に関する法律(いわゆる高齢者居住法)に基づいた「終身建物賃貸借」という制度が現れました。これは、高齢者向け住宅の権利形態のひとつであり、高齢者が終身にわたって良質な賃貸物件に安定的に居住できるための仕組みとして、借地借家法の特例として認められたものです。

終身建物賃貸借契約は、賃借人の生存中は契約が存続し、賃借人が死亡したときには契約が終了する不確定期限付き契約です。
賃貸人(家主)のメリットとしては、入居者が死亡することで原則として契約が終了しますので賃借権は相続されません。このため賃借権の相続によって発生する問題が回避でき、また、立退き料の問題も発生しません。


なお、賃借人(借家人)本人が死亡したときの同居人(配偶者または60歳以上の同居親族)には以下のような保護規定があります。配偶者には内縁も含みます。

1.  同居人は、賃借人(借家人)の死亡を知ったときから1ヶ月間は、引き続き当該賃貸物件に居住することができます。
2.    同居人は、賃借人(借家人)の死亡を知ったときから1ヶ月以内に賃貸人に引き続き居住する旨を申し出れば、終身建物賃貸借契約または期限付き死亡時終了建物賃貸借契約を新たに締結することができます。
 

期限付死亡時終了建物賃貸借契約

期限付死亡時終了建物賃貸借契約とは、定期借家契約と終身契約との複合形態で、契約更新がなく、期間が定められた契約であり、且つ、期間満了前でも借家人が死亡すれば終了する賃貸借契約です。たとえば、50年の期限付死亡時終了建物賃貸借契約であれば50年後か死亡時のいずれか早い時期に契約が終了することになります。
 

終身建物賃貸借契約の要件

1. 契約の締結は書面によることが必要です。
2. 賃貸人は、都道府県知事(市町村に権限委譲している場合は各市町村長)または政令市・中核市の市長の事業認可を受けなければなりません。
3. 建物は、一定の要件を満たしたバリアフリー住宅であること。
4. 入居者は60歳以上の高齢者でなければならず、同居する者も配偶者(内縁でも可)もしくは60歳以上の親族に限られます。
5. 借家人が死亡したときに賃貸借契約が終了する、不確定期限付き契約になります。
 

終身建物賃貸借契約の解約

賃貸人(家主)からの解約

賃貸物件が老朽、損傷等により住宅としての適格性を維持するのが難しい場合や賃借人が長期間居住しなくなることで管理が難しくなった場合には等の場合は、賃貸人(家主)は知事等の承認を受けて解約することができます。

この解約については借地借家法の正当事由の規定は適用されません。

賃借人(借家人)からの解約

療養、老人ホームへの入所、親族との同居等が理由の場合は、1ケ月前の解約申入れによって賃貸借契約が終了します。その他の理由の場合は、6ケ月前の解約申入れによって賃貸借契約が終了します。