胎児と相続登記の関係

胎児名義の相続登記はできるのか?


民法886条の規定により、胎児は相続については既に生まれたものとみなされ、胎児にも相続能力が認められていますので、相続登記において登記名義人になることができます。
ただし、胎児は「死体で生まれる」可能性もありますので、出生前の相続関係は確定しないままの状態であるため、胎児名義の相続登記が認められるのは、遺産分割協議によらない法定相続分による登記に限られています(昭29.6.15民甲第1188号)。

胎児名義の相続登記における留意点


胎児を登記名義人として登記する場合、出生前であるために胎児の氏名・住所を証明することができません。このため実務では氏名については「亡A某妻B某胎児」と記載し、住所については胎児の母の住所を用います(明31.10.19民刑第1406号民刑局長回答)。

胎児名義の相続登記後に、胎児が死体で生まれた場合


胎児が死体で生まれた場合は、相続開始時点に遡って権利能力が無かったことになりますので、相続権のない者の名義で行った登記を本来の相続関係にもとづいた内容に更正する必要があります。

事例1の場合

被相続人の配偶者、第一子及び胎児名義で相続登記(配偶者4分の2、第一子4分の1、胎児4分の1)を行ったが、その後、胎児が死体で生まれた場合は、配偶者と第一子が共同相続することになりますので、「錯誤」を登記原因として以下の持分割合に所有権更正登記をします。

配偶者 2分の1(実質の相続割合は変わりません)

第一子 2分の1(相続割合が4分の1増加します)
 

事例2の場合

被相続人の配偶者と胎児名義で相続登記(配偶者2分の1、胎児2分の1)を行ったが、その後、胎児が死体で生まれた場合は、第一順位の相続人がいない状態になり、第二順位の直系尊属が配偶者と共同相続することになります。
したがって、配偶者3分の2(9分の6)、父方の祖父9分の1、父方の祖母9分の1、母方の祖母9分の1の割合で相続することになります。

留意点 直系尊属が相続人になる場合は、直系卑属が代襲相続する場合と異なり、固有の相続権によって相続(本位相続)することになりますので、直系尊属の相続分は全員が均等になります。
本事例の場合、Aの母Dの相続分6分の1をAの母方の祖母HがDに代襲するわけではありませんので、他の直系尊属よりもDの相続分が多くなるわけではありません。

   代襲相続と本位相続との相続分比較
 

胎児名義の相続登記後に、胎児が生きて生まれた(生産児)場合


出生後は戸籍や住民票等で氏名・住所が公証できるようになりますので、登記実務においては登記名義人(胎児)の表示(氏名・住所)の変更登記をする必要があります。
この場合の登記原因は、出生によって氏名・住所が定まりますので「年月日(出生の日付)出生」となります。
 

胎児名義の相続登記後に、胎児が生きて生まれ(生産児)、のちに死亡した場合


胎児が死体で生まれた場合と異なり、一旦は権利能力を取得していますので更にこの者について相続が開始します。ただし、登記実務においては当初の登記が胎児名義(「亡A某妻B某胎児」)のままでは相続登記における被相続人にはなれませんので、前述と同様に登記名義人の表示(氏名・住所)の変更登記を行ったうえで、次に、「相続」を原因として生産児の持分の全部移転登記を行うことになります。