単純承認とみなされてしまう場合 3  背信的行為

相続放棄、限定承認後の背信的行為

民法では第921条3号で、相続人が、限定承認又は相続放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったときは単純承認したものとみなす。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでないと定めています。

「隠匿」とは、相続債権者から相続財産の所在が容易にわからないようにすることをいいます。

「私に消費すること」とは、相続債権者の利益を害することを承知のうえで相続財産を他人に知られないよう私(ひそか)に消費することをいいます。

借地権者を相続した相続人が、限定承認の後に、借地権を自分のために利用し、その賃料を相続財産である家屋の売却代金で弁済することを「私に消費すること」に該当するとした裁判例があります。(大判昭12・2・9 判決全集4-9-20)。

「悪意で財産目録中へ記載しないこと」とは、相続債権者を害する意図をもって限定承認がされた場合に作成される財産目録に相続財産を記載しないことをいいます。
財産目録に記載すべき相続財産には、消極財産である相続債務も含まれます。


単純承認とみなす背信的行為については、限定承認や相続放棄の後のものに限定する説と前後を問わないとする説に分かれていますが、第921条3号但書で、相続人Aが相続放棄したことで相続人となったBが単純承認した後は、相続放棄した相続人Aが背信的行為をしたとしても、単純承認とはみなされないと定めています。
これは、単純承認した相続人Bの相続権を保護する必要があり、また、単純承認した相続人Bに対して相続債権の回収を図ろうとする相続債権者の利益も保護する必要があるためです。