遺言の方式とその概要  特別方式の遺言書2 隔絶地遺言 

隔絶地遺言とは

外部との交通が法律上または事実上遮断された場所にいるために、厳格な要件が求められる普通方式の遺言ができないときに認められる遺言方法です。
この隔絶地遺言には、一般(伝染病)隔絶地遺言船舶隔絶地遺言があります。
 

一般隔絶地遺言とは

民法第997条(伝染病隔離者の遺言)
伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。
 

条文では、「伝染病のため行政処分によって」と限定されていますが、実際には伝染病(*1)の患者本人だけではなく、病毒に汚染された家族や付添人なども交通を遮断された隔絶地にいる場合は一般隔絶地遺言が認められています。また、刑務所に収監中の人や、地震等の災害などによって事実上、外部と遮断されている場合も含むと解釈されています。

     一般隔絶地遺言の文例はこちら

* 1 現在では伝染病という表現は用いず感染症といわれています。これまでわが国の感染症対策は「伝染病予防法」に基づいて行なわれていましたが、生活環境の変化、医学・薬学の進歩によって従来の感染症の罹患率は大幅に減少しました。しかし、エイズ(後天性免疫不全症候群)やエボラ出血熱、病原大腸菌O-157、SARS(重症急性呼吸器症候群)等々の新興感染症の出現や、撲滅したあるいは将来撲滅されると考えられていた感染症の再流行(再興感染症)への対策として「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)が新たに制定されました。これによって伝染病予防法及びエイズ性病予防法等は廃止され、また、感染症法 との統廃合によって結核予防法も廃止されました。
 

船舶隔絶地遺言とは

民法第997条(在船者の遺言)
船舶中に在る者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。
 

この方式の遺言ができるのは、船舶(航行中に限らず停泊中も含む)の中にいる旅客と乗組員(船長以外)です。船舶の遭難と死亡危急時が重なる場合は、難船危急時(臨終)遺言も認められています。
なお、航空機の中でする遺言については本条は適用されません。

     舶隔絶地遺言の文例はこちら

 

遺言関係者の署名・押印

上記二つの隔絶地遺言の場合、遺言書に次の者が署名・押印する必要があります。

  ・遺言者、筆者
  ・立会人(一般隔絶地遺言における警察官、船舶隔絶地遺言における船長又は事務員)
  ・証人全員

署名・押印ができない者がいる場合は、立会人又は証人がその理由を付記して署名・押印に代えることができます。 

    隔絶地遺言において証人が印鑑を持っていなかった場合の文例はこちら

遺言者の本意よって作成された遺言であることを担保するために上記の遺言関係者の署名・押印が必要とされていますが、特殊な状況下での遺言であるために必ずしも署名・押印が可能な場合ばかりではないため例外的な措置を設けています。

隔絶地遺言の効力発生要件

隔絶地遺言については危急時(臨終)遺言の効力発生要件である家庭裁判所の「確認」は必要ありませんが、検認手続きは必要になります。
 

隔絶地遺言の効力

隔絶地遺言については、危急時(臨終)遺言と同様に、遺言者が普通方式による遺言を作成できる状態になった時(隔絶された状態が解かれた時)から、6ヶ月間生存するときは、その効力を失います。
特別方式による遺言は、公証人の関与する秘密証書遺言・公正証書遺言の作成ができない状況を考慮して設けられた方式ですので、「普通方式による遺言を作成できる状態」とは自筆証書遺言のみならず秘密証書遺言・公正証書遺言の作成ができる状態をさすと考えられています。