親子間などで不動産を売買する場合の注意点

低額譲渡は贈与とみなされます

贈与としての具体的な形式をとっていなくても、受ける側に経済的な利益が生じている場合には、贈与があったとみなされて贈与税の対象となります。このような財産(行為)のことを「みなし贈与財産」といいます。
この典型的なケースの1つが、親子や兄弟などの特殊関係者の間での土地の売買です。

たとえば、父親が時価5000万円の土地を子供に2000万円で売った場合に、売買契約書を作成し、所有権移転登記の登記原因も売買として行ったとしても、「低額譲渡」であるとして、時価との差額の3000万円が贈与とみなされます。
法律の形式上は、売買契約の形式をとっているにもかかわらず、贈与の事実があったとみなされます

土地の時価は、どうやって算定するのか

相続税法では、「低額譲渡」について「時価よりも著しく低い価額」で売買した場合に課税すると規定されております。
では、この「時価」については、どうやって算定すればよいのでしょうか。「時価」とは通常の取引価額のことをいいます。しかし、通常の取引価額といったところで土地には定価なるものがありませんので、通常は次のような方法で算定します。

時価(通常の取引価格)の算定方法

①不動産仲介会社等の査定金額

(実務では、3~4社に査定金額を出してもらい、その平均金額を時価とします。一般的に用いられている算定方法です。)

②不動産鑑定士の鑑定評価書

(比較的、税務当局から否認されにくい安全な算定方法ですが、鑑定費用が掛かります。)

③相続税評価額を0.8で割り戻した価格や固定資産税評価額を0.7で割り戻した価格を時価とする方法

(これらの価格は、時価を算定する際のひとつの目安とするのはよいでしょうが、これを直ちに時価だと決定することは、適当でないと思われます。)

上記の方法で算定した時価であっても、特殊関係者間の恣意的な判断が入っていると税務当局が判断した場合は、適正でないとされる場合があります。③の方法は目安として利用し、①や②の客観性のある算定方法を用いて判断するのがよいでしょう。

どれくらい低い金額で売買すれば、贈与とされるのか

親子間や兄弟間などの「特殊関係者間」で土地を売買する場合に「いくらで売買すれば贈与とみなされないのでしょうか」との質問を受けることがよくあります。
明確な判断基準があるわけではないのですが、時価(通常の取引価格)の2割減程度が許容される限度であるとの考え方が一般的です。時価が5000万円の土地であれば4000万円前後の金額から、「低額譲渡」であると認定される可能性が高いと考えられます。