審判による分割

遺産分割審判の内容

遺産分割の調停を申し立てたが、遺産分割調停が不成立となった場合、調停申立て時に審判の申立てがあったものとみなされ、審判手続に移行します。
調停が不成立に終わることによって当然に審判手続が開始されるので、あらためて審判申立書を提出する必要はありません。
また、共同相続人間で、遺産分割協議が調わないときまたは協議することができないときは、まず調停を申し立てることが一般的ですが、直接審判の申立てをすることもできます。いきなり審判を申し立てた場合であっても、家庭裁判所はいつでも職権で事件を調停に付することができます。(家事事件手続法274条1項)

遺産分割審判のような家事審判は、裁判官である家事審判官が単独で審判するのが通常です。
民法第906条が定める遺産分割の基準(遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。)に従って、各相続人の相続分に反しないように分割を実行することになります。
しかし、審判においては、分割協議や遺産分割調停と異なり、家庭裁判所が裁量により相続分を増減することは許されません。

遺産分割審判では、金銭の支払い、物の引渡し、登記義務の履行その他給付を命じることができます。
このような給付的審判は執行力を有し、相手方が審判の内容を履行しない場合には、強制執行によってその内容を実現することができます。

審判に対する不服申立て

遺産分割審判に不服がある場合は、即時抗告を申し立てることができます。(家事事件手続法85条1項・198条1項1号)即時抗告以外の方法による不服申立ては認められません。
即時抗告をすることのできる期間は、審判の告知を受けた日の翌日から起算して2週間で、各相続人毎に告知を受けた日から進行します。(家事事件手続法86条1項)
不服のある当事者は、期間内に審判をした家庭裁判所に即時抗告の申立てをしなければなりません。(家事事件手続法87条1項・民事訴訟法331条・286条)また、抗告裁判所は、当事者の意見を聞いて、事件を改めて家庭裁判所の調停に付することもできます。(家事事件手続法274条1項)

審判の確定

遺産分割審判が確定するのは、次の4つのいずれかのときです。

①即時抗告の期間が徒過したとき
②即時抗告権者全員が抗告権を放棄したとき
③即時抗告期間経過後に即時抗告を取り下げたとき
④抗告審の裁判が確定したとき

遺産分割審判が確定した後は、同一手続内で取消し・変更をすることができなくなります。(形式的確定力)
しかし、家事審判手続は、家庭の平和と健全な親族共同生活の維持を図るため、国家が後見的な立場から私人間の法律関係に積極的に介入し、合目的的な裁量によって当事者間の法律関係を形成するものですから、実質的確定力ないし既判力を有せず、その判断内容は後訴において当事者および裁判所を拘束しません。