はじめに

相続が開始した場合、相続人は単純承認をするか、相続放棄するか、限定承認するかの3つの方法のいずれかを自由に選択することができます。

「単純承認」とは、すべての相続財産を承継することをいいます。相続人が単純承認を選択した場合は、積極財産(プラスの財産)とともに消極財産(負債)をも無限に承継することになります(被相続人の一身専属的権利義務を除きます)。
負債(消極財産)が積極財産(プラスの財産)よりも多い場合、相続人は自己の固有財産を弁済に当てる必要があります。

相続放棄とは、被相続人が遺した積極財産・消極財産のいずれの財産も一切受け継がないことをいいます。
被相続人が遺した借金・負債を相続人が受け継ぐことで、場合によっては相続人の生活が破綻してしまうこともあり、また、事情があって故人の相続に関わりたくないような場合にも相続放棄をすれば相続に関わる諸般の手続や心情的な負担感からは解放されます。

限定承認というのは、積極財産(プラスの財産)の範囲内で被相続人の債務を引き継ぐ方法で、単純承認と相続放棄の中間形態です。この方法は、負債額が積極財産(プラスの財産)を明らかに超える場合や、不明な借金・負債が存在する可能性がある場合などに有効です。
相続財産の調査のなかでも債務の調査については困難なケースも多く、実際にはプラスの財産とマイナスの財産(負債)のどちらのほうが多いのかが把握できないケースは少なくありません。調査時に確認できなかった多額な負債が後になってから発覚するケースもあります。しかし、限定承認を選択していれば、相続したプラスの財産を超過する負債については相続財産の限度でのみ支払義務を負いますので、自己の固有財産から弁済することは免れます。