「相続放棄」知っておきたい5つのポイント・Part3

相続放棄を検討する際に知っておいてもらいたい5つのポイントのPart3です。

⑤「相続分がないことの証明書(特別受益証明書)」にご注意

相続分がないことの証明書特別受益証明書)」とは、亡くなった人から生前に相続分相当の贈与を受けているため、自分が相続する相続分はないということを書いた書面のことをいいます。

この証明書があれば、遺産分割協議相続放棄をしなくても不動産の相続登記ができるために簡便的な方法として、実務上広く行われています。

しかし、次のようなケースでは、注意が必要です。

相続人の一人から、他の相続人に対してこの証明書が送られてきて、財産や債務の内容も知らせないままに署名捺印を要求された。

(よくある事例・1)

相続財産が被相続人所有の自宅のみで、同居していた相続人が普段疎遠になっている兄弟等の相続人に証明書を送ってきて署名捺印を要求してくるケースがよくあります。

自宅以外に財産がなく、証明書を送付してきた相続人のみが被相続人の面倒を見ていた等の事情を送付されてきた側の相続人が理解している場合には、署名捺印に応じてもよいと思われることも少なくありません。

しかし、たとえプラスの財産を相続する意思がなくても、マイナスの財産を調査せずにこの証明書に署名捺印することは危険です

「相続分がないことの証明書(特別受益証明書)」に署名捺印することは、「相続放棄」とイコールではありません。これによりプラスの財産をもらう権利が無くなってもマイナスの財産を引き継ぐ義務は残ってしまうのです。

(よくある事例・2)

この証明書への署名捺印と引き換えに、財産を引き継ぐ相続人だけが債務を引き継ぐという書面を交わすことがあります。しかし、この約束は、相続人同士の間では有効ですが、第三者(債権者等)には対抗(主張)できません

つまり、「相続分がないことの証明書(特別受益証明書)」に署名捺印することは、ポイント④の「遺産分割協議において相続財産をもらわないこと」と同じことを意味し、その相続人がプラスの財産だけを相続しないことに決定したという事なのです。

マイナスの財産を引き継ぐ義務は残ってしまうことに注意してください。

(よくある事例・3)

「相続分がないことの証明書(特別受益証明書)」に署名捺印を要求してくる際に、「この証明書は相続放棄と同じ効果がある。」と言ってくるケースもあります。

しかし、上記のように「相続分がないことの証明書(特別受益証明書)」に署名捺印しても、マイナスの財産を引き継ぐ義務がなくなるわけではありません。マイナスの財産を引き継ぐ義務が確定的になくなる「相続放棄」とは、全く異なる効果をもたらしてしまいます。

「相続分がないことの証明書(特別受益証明書)」に署名捺印を要求された場合に、プラスの財産もマイナスの財産も相続する意思が全くないのであれば、「相続放棄」することをお勧めします。