相続税対策は慎重に!Part3

小規模宅地等の評価減の特例の適用要件が拡大される!

「小規模宅地等の評価減の特例」は、相続税節税効果が高いので広く利用されている制度です。この「小規模宅地等の評価減の特例」の改正の内容についてお伝えいたします。

1. 小規模宅地等の評価減の特例対象面積の拡大

特定居住用宅地等の特例対象面積の拡大

自宅敷地等の特定居住用宅地について、特例の対象面積の上限がこれまでの240㎡から330㎡に拡大されます。
しかし、大阪市などの都市部で240㎡を超える自宅敷地を有する人は限られるため、恩恵を受けるのは一部の資産家のみだと考えられます。

特定居住用宅地等と特定事業用宅地等を併用する場合の限度面積の拡大

会社や工場として使っている特定事業用宅地については400㎡まで80%減額が可能なのですが、改正前は特定居住用宅地240㎡と特定事業用宅地400㎡の両方を限度一杯使うことはできず、両方合わせて400㎡までの適用でした。今回の改正により併用が完全に認められ、330㎡と400㎡を合計した730㎡まで80%減額できることとなりました。この改正により特定居住用宅地等と特定事業用宅地等を併用できる同族会社の経営者や個人事業主等は、大きな恩恵を受けることができます。

自宅の相続は小規模宅地等の評価減の特例の適用が重要!

上記の内容の小規模宅地等の評価減の特例対象面積の拡大につきましては、恩恵を受けるのは限られた方のみであり、大きな影響はないと考えられます。しかし、基礎控除額が大幅に縮小されたことにより、小規模宅地特例の適用の重要性が高まったことに注意が必要です。
相続税改正前は相続人が奥さんとお子さん2名の場合、相続財産が8,000万円以下なら相続税はかかりませんでしたが、改正により基礎控除が4割カットされ相続財産が4,800万円以下でなければ相続税が発生することになります。大阪市内など地価の高いところに土地を持っている方ではこの小規模宅地特例を使えるか使えないかによって、払うべき相続税額に大きな違いが出てきます。特例を使えずに納税資金がなければ最悪、自宅を手放さなければならないということにもなりかねません。

特定居住用宅地等(自宅の敷地)の評価減の特例の適用要件

特定居住用宅地等」は、被相続人の居住用に使われていた宅地(自宅の敷地)のことで、次のいずれかの要件を満たした場合に240㎡(改正後は330㎡)まで減額されます。この要件は、厳格に判断されますので注意が必要です。

①被相続人の配偶者が相続する。
②被相続人と同居していた親族が相続し、申告期限まで引き続き所有し居住用に使用する。
③被相続人に配偶者も同居していた親族もいない場合に、相続開始前3年以内に持ち家のない別居親族が取得し申告期限まで引き続き所有する。

自宅の相続では、無理のない範囲で上記の適用要件を満たす状態にしておき、小規模宅地等の特例を使って相続税を節税しましょう。
 

2. 二世帯住宅の適用緩和

 これまで、上記の内②の要件が二世帯住宅の場合によく問題となりました。内部が完全に分離している2世帯住宅の場合、それぞれが独立した家屋とみなされ、小規模宅地等の特例を受ける条件である「同居の親族」には当たらないとされてきました。そのため、80%減額の特例を受けることができなかったのです。
しかし、今回の改正で、完全に内部が分離している二世帯住宅であっても「同居」と見なされることになり、80%減額の特例を受けられるようになります。
この適用要件の緩和により、二世帯住宅での特例適用が拡大するでしょう。
 

 3. 老人ホームに入居する場合

また、終身利用権付きの老人ホームに被相続人が入居している場合などは、被相続人の「居住の用」に供していないとして、元の自宅の敷地に80%減額の特例を受けることができませんでした。特別養護老人ホームに入居している場合については、原則として80%減額の特例を受けることができるのと比較して、不当ではないかと言われてきた相違点です。
これについて今回の改正では、終身利用権とか特別養護とかに判断基準を置くのではなく、老人ホーム入居前に居住していた土地について、以下の2点をクリアしておれば、被相続人の居住の用に供しているとみなされ、80%減額の特例が適用されることになります。

①被相続人に介護が必要なため入所したものであること
②貸付などの用途に供されていないこと

この適用要件の緩和により、被相続人が老人ホームに入っていた場合の特例の適用が拡大するものと考えられます。