ご依頼事例から見る相続手続のポイント・「公正証書遺言には必ず従わなければいけないのか」

ご依頼事例1

父が公正証書遺言を残して亡くなりました。公正証書遺言の内容には必ず従わなければならないのでしょうか?

ご相談内容

先日、父が「自分の財産の全てを母に相続させる」という内容の公正証書遺言を残して亡くなりました。
しかし、母は高齢であり、父の財産のほとんどは不動産ですので、私たち兄弟(私と弟の2人兄弟です)が相続するほうが良いと思うのですが、公正証書遺言の内容には絶対に従わなければいけないのでしょうか。

当オフィスの対応

お母様を含めた相続人全員が遺言の内容を知ったうえで、遺産について別の分割方法を合意すれば、公正証書遺言の内容と異なる遺産分割を行うことは可能である事をご説明いたしました。
当オフィスの提携税理士による二次相続を見据えた遺産分割に関するアドバイスを受けていただきながら、相続人全員で遺産分割協議を行っていただき、ご両親のご自宅はお母様が、それ以外の不動産はご兄弟で相続される事で合意されました。
当オフィスでは合意内容に基づき遺産分割協議書を作成し、相続登記を完了いたしました。

ワンポイントアドバイス

この事例のように、相続人全員の合意により遺言と異なる遺産分割は可能ですが、遺言で財産を第三者に遺贈することが規定されている場合は、その財産は第三者のものになります。
また、遺言に遺言執行者の定めがある場合には、遺言を執行したら得られたであろう報酬相当額について遺言執行者から損害賠償請求を受ける可能性がありますので、遺言執行者の同意を受ける必要があります。
さらにこの事例のように配偶者が相続人となる場合には、相続税のことも考慮する必要があります。
配偶者の税額軽減の特例をフルに利用して、一次相続の相続税負担を軽減することばかりを重視すると、二次相続の税負担が過大になる場合があります。
一次相続と二次相続の全体を通じて相続税負担を少なくするように、一次相続時に、二次相続を見据えた遺産分割を行うことが重要です。
遺言と異なる遺産分割を行う場合には、以上のような注意点が有りますので、専門家のアドバイスを受けて慎重に検討することをお勧めいたします。

遺言書作成の必要度チェック

遺言書の必要性をご自身で判断していただくためにシンプルなチェック表を挙げておきました。
いずれかの項目に複数該当する場合は、一度、相続・遺言無料相談をご活用ください。


遺言書作成の必要度チェック表